第20話「覚悟の一歩!“自分の仕事”として挑む時」

第20話「覚悟の一歩!“自分の仕事”として挑む時」

一歩、職場に踏み出す朝

朝の空気はどこか凛としていた。シャツの襟元を正し、ネクタイの結び目を確認する直人。その表情には、これまでとは違う決意の色が滲んでいた。

「今日は、逃げない。」

自分にそう言い聞かせるように、小さく呟くと、彼はいつもの道を歩き出した。通い慣れた職場、けれど今日はほんの少し違って見える。

職場の入り口。重く感じていた自動ドアが、今日は少し軽やかに開いた気がした。

引き継ぎじゃない、「自分の仕事」

数日前、先輩の佐伯から一つのプロジェクトを「任せてみるか」と言われた。正確には引き継ぎではなかった。佐伯自身も関わり続けるが、実質的に直人が中心となって進めていく案件。

それは、社内の業務フロー見直しに関するものだった。これまで何度も関わってきたが、今度は自分が中心に立つ。「自分の仕事」として受け取るのは、初めての感覚だった。

プロジェクトの朝会。いつもは隅の席にいる直人が、今日に限って中央に立つ。

「まず、進行の現状ですが――」

口調はまだ硬い。手にした資料も少し震えていた。けれど、その震えを自覚しながらも、直人は言葉を止めなかった。聞き手の視線が集まるたびに、胸が熱くなった。

この熱は、緊張だけではない。

「任された」だけじゃ、終われない

昼休み、休憩室で佐伯と二人になった。

「思ったより、堂々としてたな。意外だったよ」と佐伯は笑った。

「…いえ、正直、足が震えてました。でも、今回は“任された”というより、自分から“引き受けた”気がしていて。」

その言葉に、佐伯は少し目を見開いてから、頷いた。

「だったら大丈夫だ。お前が“自分の仕事”として動けば、たとえミスがあっても、それは糧になる。」

責任という言葉は、以前の直人にとっては“重荷”でしかなかった。でも今は、ほんの少し“誇り”に近づいた気がしていた。

NEET-Xからの問いかけ

その夜、部屋のインターホンがまた点滅していた。

『録画:本日 18:57』

映像を再生すると、NEET-Xが相変わらず仏頂面で立っていた。けれど、今回は言葉が違った。

「“自分の仕事”と呼べる何か、見つけたか?」

直人は、画面に向かって小さく頷いた。画面の中のNEET-Xも、ほんの一瞬だけ、目を細めた気がした。

初めての「自発」

プロジェクトの資料作成に取り組む夜。誰に言われたわけでもなく、自分から構成を練り直す直人。効率や見栄えだけではなく、「この資料を見た誰かが、安心して仕事を進められるように」と願いながら。

それは、かつての「指示待ち」だった自分とはまったく異なる姿だった。

作業を終えた直人は、深く息を吐いた。

「……よし。」

小さなガッツポーズをするその手には、確かに「覚悟」が宿っていた。


次回予告:

第21話「本当の声を届けたい!意見する勇気を持てた日」

指示通りに動くだけでは、チームの力にはなれない。会議での一言が、直人の未来を大きく変えることに──。

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