“見えない相手”との対話
「次は、電話をかけるんだ」
NEETレベルアップノートの新しいページに、簡潔にそう書かれていた。
– 店や役所などに電話をかけて3分間会話する(15pt)
電話。
それは、白崎直人にとって最も“やりたくないこと”の一つだった。
理由は明確だ。
相手の顔が見えない。
反応がわからない。
話すタイミングも、声の抑揚も難しい。
ましてや、最近ではLINEやメッセージが主流。
若者の中でも、電話が苦手な人は多い。
「……俺には、ムリかも……」
布団の中でそう呟きながら、直人はスマホの電源を入れた。
電話の練習をする
鏡の前で、直人は練習していた。
「お、お世話になっております……」
「……予約の確認をしたいのですが……」
電話の“型”を調べ、文章を覚える。
だけど、どうしても自分の声が不自然に聞こえてしまう。
「誰かに聞かれてるわけでもないのに、なんでこんなに緊張するんだよ……」
それでも彼は諦めなかった。
初歩の練習として、まずは“自動音声”に電話をかけてみることにした。
コールセンターの音声ガイダンス、病院の予約システム。
相手が人間じゃないとわかっていても、受話器を持つ手は震えていた。
初めての実戦:病院への電話
最終的に直人が選んだのは、地元の内科クリニックだった。
「風邪の症状で診てもらいたい、と仮定して……」
電話番号を押す指が震える。
画面に「発信中」と表示される。
1コール、2コール……
「はい、○○クリニックです」
「……し、白崎と申します……」
息が詰まりそうだった。
けれど、用意していた台本どおりに言葉をつなぐ。
「○○日の午前中で……診察の予約をお願いしたいのですが」
「はい、承知しました。保険証はお持ちですか?」
「は、はい……あります」
会話は、なんとか成立した。
所要時間、約2分40秒。
だが、直人には5分にも10分にも感じられた。
「……終わった……ちゃんと話せた……」
NEET-Xからのメッセージ
その夜。
インターホンに録画されたNEET-Xの映像。
「やったな、直人。
見えない相手と会話するのは、実際に“見られる”よりも難しい。
だが、お前は超えた。これは、成長の証だ」
画面のクロウは、微かに笑ったように見えた。
15ポイントと確かな自信
– 電話をかけて3分間会話(達成:15pt)
ノートに書き込み、ポイントは累計60ptに到達した。
「60……もう、引きこもってた時の俺じゃない気がする……」
彼の心には、確かに“何かが変わり始めた”手応えがあった。
次回予告:「エントリーシートを書く!言葉で自分を表現できるか?」
言葉にすること——
次なるチャレンジは、自分自身の“文章化”。
エントリーシートという壁に、直人はどう立ち向かうのか?