第7話「エントリーシートを書く!言葉で自分を表現できるか?」

“言葉”が自分を決める

白崎直人は、机の前で固まっていた。

パソコンの画面には、シンプルなPDFファイルが開かれている。

それは、ある地元企業の“職場体験”申込み用のエントリーシートだった。

名前、住所、年齢……そこまでは機械的に入力できた。

しかし、目の前には大きな空欄があった。

「志望動機」「自己PR」

「……こんなの、どうやって書けばいいんだよ……」

紙の上にあるたった数行。
だけど、その数行が“今の自分”をすべて表すものになる。

直人にとって、それは恐ろしくもあり、そしてどこかで“避け続けてきた問い”だった。


自分を見つめるという恐怖

ノートにこう書かれていた。

– エントリーシートを書く(20pt)

その横に、小さく“自己理解ミッション”とある。

自分の過去、自分の強み、自分が何をしたいのか。

これまで、直人は「何者にもなりたくない」とさえ思っていた。

“期待されるのが怖い”
“頑張って失敗したらどうする?”
“バカにされるのが嫌だ”

だから、何もしないでいれば、誰にも責められない。

でも、NEETレベルアップノートにはこうも書いてあった。

自己PRとは、「過去の自分と向き合うこと」であり、
志望動機とは、「未来の自分に誓うこと」である。

「……向き合えってか……」

直人は、深く息を吐いた。


書き出した言葉はぎこちなくても

ワードファイルを開いて、カーソルが点滅するのを見つめる。

“こんにちは。白崎直人と申します。”

まずは形から入る。
だが、すぐに止まってしまう。

“自分の強みは……?”

“過去に頑張ったこと……?”

頭の中が真っ白になる。

でも、ノートを振り返って思い出す。

・外に出たこと
・子どもにあいさつしたこと
・コンビニで買い物したこと
・バイトで「ありがとう」と言われたこと
・電話で予約を取ったこと

「……これ、全部俺がやったことだよな」

たった1ヶ月前は、布団の中から出ることさえできなかったのに。

“完璧じゃなくても、真実なら価値がある”

そう思えた瞬間、手が自然に動き始めた。


エントリーシート、完成

1時間後——

画面には、400字程度の志望動機と、自己PRが埋まっていた。

文章はぎこちない。
敬語も怪しい。

でも、それはたしかに“直人の言葉”だった。

「私は人と関わることが苦手でしたが、最近少しずつ前へ進めています。
小さな経験の積み重ねが、自分にとって大きな変化になっていると実感しています。
今回の体験を通じて、もっと社会と関わる自信を得たいと思っています」

直人は“保存”ボタンを押し、ゆっくり目を閉じた。


NEET-Xからの通信

その日の夜。
また、インターホンに映像が届いていた。

「書いたな、直人」

クロウの声が、少しだけ低く響いていた。

「自分の言葉で、自分を表現するというのは、最も難しい課題の一つだ。
だがそれをやりきった今、君は“他者のまなざし”を恐れなくなりつつある」

「次は、実際に“提出する”という壁が待っている。
覚悟はいいな?」

直人は、小さくうなずいた。

「……はい」


ポイントとともに芽生えた覚悟

– エントリーシートを書く(達成:20pt)

ポイント合計:80pt。

「……俺、100に届くんじゃないか?」

初めて“数字”を希望として感じた。


次回予告:「面接!?人と目を合わせて話す試練」

提出の次は、対面。

最大の難関、“面接”が直人を待ち受けていた。

目を合わせて、声を出し、言葉を交わす。

これは、彼にとって“敵との対面”に等しい闘い。

それでも、直人はその扉に、手をかける。

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