二日目の朝
「昨日は、なんとかやれた……でも、今日は?」
白崎直人は、ベッドの中で目覚めたまま、自問していた。
職場体験の初日は、ぎこちないながらも終えることができた。
だが、日を重ねるごとに“存在”が問われていく気がしていた。
「もう“新人”じゃないと思われるかもしれない」
「話しかけた方がいいのか、黙っていた方がいいのか」
不安は、むしろ2日目以降に膨らむのかもしれない。
空気を読む、という難問
午前9時。
出勤した直人は、昨日と同じ席に着いた。
誰も場所を指示しなかったが、自然と“ここが自分の定位置”のように感じた。
今日の作業は、データの整理とファイルの分類。
単純作業だが、集中力が必要だった。
隣のデスクでは、別の職員が電話をかけながら何かの確認をしている。
直人は、話しかけていいのか迷った。
「いま声をかけたら、邪魔になるかな……」
「でも、このファイルの意味が分からない……」
結局、2分悩んでから、小さな声で言った。
「……すみません、これって……」
「ん? ああ、それはね——」
すぐに丁寧に教えてくれた。
直人は、拍子抜けするほどホッとした。
休憩室の孤独と、声のきっかけ
午前10時半。
休憩時間。
昨日と同じ席に座って、スマホを手にして時間を潰す。
だが今日は、先に席にいた若い男性職員が、コーヒーを飲みながらこう言った。
「新人さん、今日も来てるんだね」
直人は一瞬驚いて、すぐに頷いた。
「は、はい。今日で2日目です」
「そっか、データ整理のとこ手伝ってるんだよね? 助かってるって聞いてるよ」
「えっ……そうなんですか……」
短い会話だった。
でも、昨日にはなかった“自然な言葉のやりとり”だった。
“ここに、自分の存在がある気がした。”
小さな変化
午後。
直人は、他の職員の席にある備品の確認も任されるようになった。
単なるコピー用紙の残量チェック。
でも、“誰かの役に立つ”ことを頼まれるのは初めてだった。
「お願いします」と言われ、「わかりました」と返す。
それだけのやりとりが、彼の心に確かな輪郭をつけていく。
ノートに記された“居場所”
退勤後。
直人は、自宅の机でノートを開いた。
– 職場で会話を交わす(10pt)
– 簡単な仕事を任される(10pt)
ポイントは累計155ptに。
だが、数字よりも大きかったのは、“安心感”だった。
「ここにいても、いいのかもしれない」
次回予告:「一人じゃできない仕事に挑戦!チームで動くという試練」
直人に、新たな課題が課される。
「誰かと一緒に作業する」——それは、“他人に迷惑をかけるかもしれない”という不安と向き合う時間。
次回、直人は「チーム」という壁をどう乗り越えるのか?