第11話「一人じゃできない仕事に挑戦!チームで動くという試練」

第11話「一人じゃできない仕事に挑戦!チームで動くという試練」

3日目の通達

「明日は、少し動きのある作業に入ってもらうかも」

2日目の終わり際、事務員の藤原さんからそう声をかけられた。

「動きのある……?」

「書類の仕分けと配送チェック。2人ペアでやることが多いの」

その瞬間、直人の中に緊張が走った。

“一人じゃない”
“誰かと一緒に作業する”

それは、学校やアルバイトでも避けてきたことだった。

「また足引っ張ったらどうしよう……」

けれど、レベルアップノートに記されたミッションの項目が、静かに背中を押していた。

– 他人と共同作業を行う(25pt)


チーム作業の朝

翌朝、直人はいつもより早く出勤した。
落ち着かない気持ちを整理するため、少しでも早く“職場の空気”に慣れたかった。

9時きっかり。

「じゃあ今日は、白崎くんは斉藤くんと一緒に、会議資料の仕分けと運搬、お願いしていい?」

そう声をかけられ、振り返ると、スラッとした体格の若い男性がこちらに会釈してきた。

「よろしく。重いのもあるけど、分担すれば大丈夫だから」

「……よ、よろしくお願いします……」

その声はかすれていたが、なんとか出せた。


言葉をつなぐ難しさと、一歩

作業は、会議室ごとに異なる部数の資料をまとめ、台車に積んで運ぶという内容だった。

分担のためには、確認が必要だった。

「えっと……こっち、10部でしたっけ?」

「うん、それ10部。ありがとう」

「次の会議室って……3階?」

「そうそう、あのエレベーター使えば近いよ」

会話は、簡潔なものだった。
けれど、その一言一言が、直人には大きな一歩だった。

会話を避けるクセ、目を合わせない癖——

それらが少しずつほどけていくようだった。


「助かったよ」

2時間の作業が終わり、戻ってきた休憩室で、斉藤が笑顔で言った。

「直人くん、助かったよ。手際良かったし、気配りもあった」

「……本当ですか?」

「うん。俺、1人より2人の方が作業しやすかったな」

直人の中で、何かが柔らかく、温かく、動いた気がした。

“自分の存在が、他人の中で意味を持った”

それは、これまでで最大の実感だった。


ノートの重み

帰宅後、いつものようにノートを開く。

– 他人と共同作業を行う(達成:25pt)

累計:180ポイント。

ページの端が、少し擦れて柔らかくなっていた。

「俺、このノートのおかげで、ここまで来れたんだな……」

直人は、そのページをそっと閉じた。


次回予告:「最終日目前!“ありがとう”を伝える勇気」

職場体験も、いよいよ残りわずか。

最後のミッションは、「感謝を伝えること」。

照れくさくても、ぎこちなくても。

直人は、自分の言葉で“ありがとう”を届けられるのか?

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