第14話「引きこもり卒業試験!“面接”という名のラスボス戦」

第14話「引きこもり卒業試験!“面接”という名のラスボス戦」

朝6時45分、目覚ましと戦う男

「……ぅ……ん……」

布団の中で小さくうめく声。 アラームがけたたましく鳴っている。 その音に顔をしかめながら、白崎直人はゆっくりと目を開けた。

久しぶりの“早起き”。 この2週間、彼はNEET-Xの指導のもと、生活リズムを整えることから始めた。 夜更かしは減り、朝の散歩やコンビニでの買い物、職場体験まで経験した。

だが——

「……今日が、一番キツイかもしれない……」

ベッドの縁に座り、寝癖のついた頭をかく。 その手には、昨日の夜NEETレベルアップノートに記された新たなミッションがあった。

【ミッション:面接を受ける(50pt)】

そう。 今日は、実際の企業のアルバイト面接。

コンビニでの仕事を通して「働くこと」のイメージは掴めてきた。 けれど、“自分を売り込む”という行為には、まだまだ強い抵抗がある。

ネガティブ思考が頭をもたげる。

(話が噛み合わなかったら? 履歴書に空白期間が多すぎるって突っ込まれたら? 人間関係にまたつまずいたら……?)

だが、それでも——

「行かなきゃ、俺……また戻っちまう」

そう呟き、直人はゆっくりと立ち上がった。


準備という名の儀式

朝の支度は、すでにルーティンになりつつあった。 顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。

制服はないが、シンプルな白シャツと紺のスラックス。 少しよれたけど、アイロンのかかった服を選んだ。

鏡の前で深呼吸を数回。

「……大丈夫。できる。昨日もありがとうって言えた」

一歩ずつ、言葉に出して自分を鼓舞する。

リビングに移ると、テーブルの上に置かれていたのは、 NEET-Xが夜中に届けたらしい小さな箱。

開けると、中にはシンプルな黒いボールペンと、 封筒に入った手書きの「応援メッセージ」が入っていた。

『社会に挑むのは、君が初めてではない。 ただし、君にしか歩けない道がある。 ——NEET-X クロウ』

直人は、その紙を丁寧に二つ折りにし、胸ポケットへしまった。


運命の時間、午前10時30分

面接会場は、自転車で15分の距離にある配送倉庫だった。

受付の女性に案内され、小さな会議室に通された。

「失礼します……白崎直人です」

緊張で声が震える。 椅子に座りながら、額にうっすらと汗がにじむ。

面接官は、40代くらいの男性と、若い女性の2名。

「これまでの職歴を教えてもらえますか?」

「……大学を中退してから、しばらく家で療養していました」

ウソではない。けれど、それだけでは伝わらないこともある。 だが、直人は逃げずに言葉を続けた。

「最近、自分を変えようと思って、生活を整えたり、 地域の職場体験にも参加してみました」

面接官は静かに頷き、時折メモを取りながら質問を続けた。

「なぜ、この仕事を希望されたのですか?」

「……誰かの役に立てることがしたくて。 まずは、体力的にも挑戦しやすい場所で、 自信を積み重ねたいと思ったからです」

言葉は途切れ途切れだったが、直人の目には迷いがなかった。

面接は20分ほどで終わった。

「結果は後日ご連絡します。今日はありがとうございました」

礼をして会場を後にした直人。 背中に汗をかいていたが、どこか晴れやかな気持ちもあった。

(ああ……やり切った……)


「勝手に涙が出てくるんだ」

帰り道、公園のベンチに腰を下ろした直人。

スマホを取り出すと、NEET-Xから新着メッセージが届いていた。

『第14章 完了。 【面接を受ける:50pt】 累計ポイント:250pt』

それだけの簡潔な通知。

でも、直人の心にずしりと響いた。

気づけば、目頭が熱くなっていた。

「……なんでだろうな。涙なんて、いつ以来だろ」

遠くで子どもたちが遊ぶ声が聞こえる。 空は高く澄んでいて、風が気持ちよかった。

「俺、少しずつだけど、変われてるのかな……」


次回予告:「第2章開幕!“仮採用”から始まる試練」

新たな環境、新たな人間関係。 直人は“働く現場”へと足を踏み入れる!

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